2016年10月26日
「遺産」のうち預金以外のものについては,原則として,いったん,相続人の共有となり,事案ごとの特殊事情を考慮した「遺産分割」を待って,初めておのおのの相続人に確定的に帰属することになります。
例えば,亡くなられた方(お母様)の遺産として不動産のみが存在し,その相続人として長男と二男が存在する(遺言なし)という事例を見てみましょう。
この場合,長男と二男が2分の1ずつの割合でいったん共有することとなり,遺産分割という話し合いの結果を待って,初めて,二男が確定的に対象不動産の単独所有者となったりします。
他方で,預金については,「遺産分割の対象とならず(つまり事案ごとの特殊な事情が考慮されず),おのおのの相続人に当然に分割される」というのがこれまでの判例でした。
例えば・・・
亡くなられた方(お母様)の遺産として1000万円の預金が存在し,その相続人として長男と二男が存在する(遺言なし)とします。
長男が,お母様の生前に,お母様から500万円の贈与を受ける一方,二男はこのような贈与を一切受けていない・・・
というような事例でも,上記の判例によれば,長男と二男が,500万円ずつ,お母様の預金を相続することとなり,遺産分割協議がなくとも(話し合いを待たずに),直ちに,銀行に対して500万円の預金の払戻請求ができることとなります。
一見,不公平な気もしますが,なぜこのようなことになっているかというと,民法427条以下の規定の存在があるからです。
もっとも,専門的で難しい説明となるので,このあたりでやめておきましょう。
ただ,上記のような従来の判例が変更される可能性が出てきました。
上述のとおり,預金については,理論上,遺産分割協議を待たずに銀行に対して払戻請求ができるはずですが,払戻を拒む銀行も多く,理論と実務がかけ離れているという事情も背景にあるようです。
注目です。
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